私は、大学で教員をしています。大学の教員には、単に講義をするだけではなく、人の育成という役割も求められています。
では、どのような人間に育てることが期待されているのでしょうか。
文部科学省中教審大学分科会の審議まとめには、「学生に生涯学ぶ習慣や主体的に考える力、どんな状況にも対応できる力を育成すること」が大学の重要な責務であると書かれています。そのため、学生には、将来予測が困難な時代において、答えのない問題に対して自ら解を見出していく“主体的な能力”と、自らの責任を果たし、他者との協調性を発揮できる“社会的な能力”を身につけることが期待されています。
この“主体的な能力”と “社会的な能力”は、まさに、リーダーシップの2本柱を示しています。リーダーシップについて、心理学においてはPM理論が有名です。リーダーの果たす役割には、P機能(Performance function:目標達成機能)とM機能(Maintenance function:集団維持機能)があり、この機能の強弱により、リーダーをPM型、Pm型、pM型、pm型に類型化できると考えます(大文字は機能の強いこと、小文字は弱いことを表す)。P機能は、目標を明確に示し、課題遂行のためにメンバーを鼓舞し、課題を達成すること、M機能は、人間関係の維持を大切にし、コミュニケーションが上手くいくように調整することです。実証研究の結果、多くの場合には生産性の高い順に、PM型>pM型>Pm型>pm型であり、リーダーが集団の置かれている環境を統制しやすい場合もしくは統制が非常に困難な場合には、PM型>Pm型>pM型>pm型であるとされています。P機能を果たすために必要な能力が“主体的な能力”であり、M機能には “社会的な能力”が必要です。学生が身につけるべき力とは、優れたリーダーシップだと言えます。